No.014躯体と設備の通り道
インサートとは?天井を吊る金物とアンカーの違い
- 名前
- インサート
- 読み
- いんさーと
- 別の呼び名
- インサート金物、天井インサート
- 英語
- cast-in insert (ceiling insert)
- 見られる所
- ビルやマンションの天井の上、コンクリートの床(スラブ)の下面
ひとことで
コンクリートの床(スラブ)を打つ前に型枠へ留めて埋めておく、雌ねじの付いた金物を、建築ではインサートと呼びます。固まったあと、そこへ吊りボルトをねじ込み、天井の下地や配管・照明を吊ります。
掲載
天井板を1枚外すと、ボルトが下がっている
ビルやマンションの天井板を1枚外すと、上のコンクリートの床の下面から、細いボルトが何本も下がっているのが見えます。このボルトの根元で、コンクリートに埋まっている金物がインサートです。
言葉は英語の insert(差し込むもの・埋め込むもの)から来ています。同じカタカナでも、パソコンの「インサートキー」や樹脂の「インサート成形」、ねじ穴を直すコイルの「ヘリサート」は別のもので、建築でいうインサートはコンクリートに埋めた雌ねじの受け口を指します。
インサートが受け持つのは、天井そのものと、天井の中を通るものです。
- 天井の下地(野縁受け・野縁)と天井板
- 空調のダクトや、排水・給水の配管
- 電線を載せるケーブルラック
- 天井に埋め込む照明器具や換気扇
インサートは天井を吊るためのいちばん上の支えで、ここが抜けると、その先に吊ったものがすべて落ちます。小さな金物ですが、天井の安全を受け持っている部材です。
インサートの使い方の順番
インサートは、コンクリートを打つ前に仕込んでおくのが特徴です。
- 型枠に留める:床のコンクリートを流し込む前、下の型枠(合板)の上に、決められた間隔でインサートを釘で留める
- コンクリートを打つ:インサートごとコンクリートの中に埋まる
- 型枠を外す:固まったあと下の型枠を外すと、天井側にインサートの口が並んでいる
- 吊りボルトをねじ込む:内装や設備の工事のときに、口へ吊りボルトをねじ込んで使う
型枠の上に並べる位置は、天井の下地を吊る間隔や、配管・照明の位置で決まります。天井の下地を吊るボルトの間隔は、メーカーの施工の資料などで約900mm以下とされることが多く、インサートもその間隔に合わせて碁盤の目のように並べます。
吊りボルトの太さ:三分と四分
インサートにねじ込む吊りボルトは、ボルト全体にねじが切ってある全ねじボルトがふつうです。長さを現場で切って合わせられるからです。
太さは三分(さんぶ)と四分(よんぶ)の2つがよく使われます。インチの呼び方の名残で、三分は3/8インチ、四分は1/2インチのボルトです。重いものを吊るほど太いボルトを使うので、インサートも、ねじ込むボルトの太さに合ったものを選びます。
| 呼び方 | 太さ | よく吊るもの |
|---|---|---|
| 三分(W3/8) | 約9.5mm | 天井の下地、軽い配管、ケーブルラック |
| 四分(W1/2) | 約12.7mm | 重い配管、ダクト、設備の機器 |
インサートとあと施工アンカーの違い
インサートが入っていない所に、あとから吊りボルトを付けたいこともあります。そのときに使うのがあと施工アンカーです。
| くらべる所 | インサート | あと施工アンカー |
|---|---|---|
| 付ける時期 | コンクリートを打つ前(先付け) | 固まったあと(あと付け) |
| 付け方 | 型枠に釘で留めて埋める | ドリルで穴を開け、アンカーを打ち込んで広げる |
| よいところ | 穴を開ける騒音や粉が出ない。中の鉄筋を傷めない | 位置をあとから自由に決められる |
| 気をつけること | 位置を打つ前に決めておく必要がある | 穴を開けるときに鉄筋に当たることがある。施工の確かさで強さが変わる |
新しく建てるときは、図面で決まった位置にインサートを入れておき、あとで足りなくなった所や、設計が変わった所だけをあと施工アンカーで補う、という使い分けがふつうです。
デッキの床では専用の金物
鉄骨の建物でよく使う、波形の鉄板(デッキプレート)の上にコンクリートを打つ床(デッキスラブ)では、ふつうのインサートを留める型枠がありません。そのため、波板の谷に差し込む専用の金物を使います。現場では形から「傘」や「豆」と呼ばれることもあります。デッキスラブそのものはスラブの項目で説明しています。
天井が落ちないための決まり
天井を吊る金物は、地震のときに大きく揺さぶられます。2011年の東日本大震災では、体育館やホールなどで天井が落ちる被害が相次ぎました。これを受けて、国は2013年に、大きな吊り天井の作り方の基準を定めました。
この基準で対象になるのは特定天井と呼ばれる天井で、人がふだん使う場所にある吊り天井のうち、高さが6mを超え、広さが200m²を超え、重さが1m²あたり2kgを超えるものです。特定天井では、吊りボルトの間隔や、揺れを止める斜めの材(ブレース)の入れ方、まわりの壁とのすき間の取り方などに決まりがあります。
ふつうの住宅やマンションの部屋の天井は特定天井には当たりませんが、吊りボルトとインサートで天井を支えている仕組みは同じです。
天井裏の点検口から中をのぞいたとき、吊りボルトが曲がっていたり、インサートの口から抜けかけていたりしたら、管理会社や施工会社に見てもらってください。
打つ前に仕込む部材は、ほかにもある
配管を通す穴を残すスリーブも、インサートと同じくコンクリートを打つ前に仕込んでおく部材の代表です。どちらも入れ忘れれば、固まったあとに穴を開ける工事が待っています。そのため現場では、型枠を組み終えてから打つまでのあいだに、図面と照らし合わせて数と位置を見て回ります。
インサートのよくある質問
インサートとアンカーの違いは?
吊りボルトの三分・四分とは?
インサートの間隔はどれくらいですか?
インサートを入れ忘れたらどうしますか?
デッキプレートの床でもインサートは使えますか?
確かめた資料
- Panasonic TERASU辞書 吊りボルト(スラブ打設前のインサート、アンカー、デッキ用金物、三分・四分)
- 桐井製作所 耐震天井 施工上の注意(吊りボルトの間隔)(吊りボルトは約900mm以下の間隔)
- 国土交通省 建築物における天井脱落対策に係る技術基準(平成25年国土交通省告示第771号)の解説資料(特定天井の要件(高さ6m・200m²・2kg/m²))
確認日:2026年11月1日
あわせて引く
新しく載せた項目